ずらす力

天理大学の柔道部での下級生イビリに非難の声が上がっています。
武道関係の部活では上級生がハバを効かすのが常なので、別段珍しい事ではありません。
むしろ表面化して責任問題になった事の方が驚きです。

個人的には学生で武道をやりたい人は、学校の部活なんかに入らず町の道場に月謝を払って習いに行く事をおすすめします。
部活と違って色々な年齢の人たちがいて刺激になりますし、気に入らないからといって暴力を振るわれたりはしません。
なにより武道に専念できます。


●重心をずらすあれこれ

今回のテーマは「重心をずらす」でした。
接触している状態から動いていき、相手の重心をずらして崩す、というような稽古をいくつかやってみました。

相手が押してくるのを利用して下に導く時は、ただ押されるままにするよりも、分からない程度にテンションを掛けておくとうまくいくようです。
太極拳で言うところの「問勁」というのを使って、相手に微妙なプレッシャーを与えて反応を引き出します。

相手にどこか掴まれている状態から分からない様にちょっと体の一部を動かして、相手も微妙に動かす、というのも稽古してみます。
大きく動くと抵抗されてしまうので、ほんのわずかです。
こうすると、相手の力の作用点が意識している場所と実際に働いている場所にズレが生じ、「なんか力が入らない」という状態になります。
ここからさらに崩しをかけていきます。

いずれも微妙なアクションなので、なかなか難しいです。
「ちょっと」「分からないように」がポイント。

たとえば催眠術をかける場合、「あなたはだんだんねむくな~る・・」なんてやる人は素人です。
専門家はさりげなく誘導していきます。
20世紀最高の催眠療法家といわれているミルトン・H・エリクソンは、何気ない会話をしながらクライアントに催眠をかけて行ったそうで、普通に話しているだけなのにクライアントがみるみる回復していくのを周りの人達は唖然として見ていたそうです。
これなども心のポイントを「ちょっとだけ」「分からない様に」動かしているから出来ることなのでしょう。

武術の不思議な技術の数々も、全く同じだと思います。
関節技などで相手を痛がらせて姿勢を崩していくのが「分かりやすい」やり方なのに対して、相手も気付かない内に力点をずらして結果的に同じように崩していくのが「分かりにくい」やり方です。

「分かりにくい」やり方の方が難しいのは、相手だけでなくて掛ける方もよく分からないからです。
微妙な動きを感じ取るセンサーを育てる必要があります。
こういう「微妙なところ」は、怒号で脅したり、竹刀でピシピシする指導では決して身につけさせる事は出来ないでしょう。
そういう意味でも「指導」の名を借りた暴行をする教室には近づかないのが上達の早道です。

人に教えるのに怒鳴りつけたり手を出したりするのは、上手く教えられないイライラを生徒にぶつけているだけで厳しさとは何の関係もありません。
本当の厳しさというのは、内容の難しさ、深さを生徒に実感させ、自分で解決するよう促す「要求への厳しさ」ではないかと思います。


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