背中を動かす

長いこと武術に関わっていますが、習いに行ったり、仲間同士で練習したりして自分が知らない事、出来ない事があまりに多いのに驚かされます。
武術はまさしく「ワンダーランド」です。
どこまで追求しても、どんなに上達しても、まったく先が見えない世界です。

●背中を使う

今回は管理人のターンです。
先週の続きで「腕無し」の技を稽古してみます。

両手をがっしり掴んでもらい、腕は使わず、背中の筋肉を動かして相手を引っ張り込みます。
腕の力でいくら引っ張っても崩れませんが、腕をただの連結具にして背中で引っ張ると不思議なことに相手の体ごとこちらに倒れ込んできます。

最初は足を平行のまま動かさずにやってみましたが、倒れ込んでそのまま自分に突っ込んで来るので、ぶつからないように脇に逸らさなければなりません。
そこで足を半歩出して、体を回転させてみたら受け側も掛け側も力感が無い投げ技になりました。

ここからもう一工夫して相手が宙を舞うような技にしたい、と色々試みてみましたが、うまく行きません。
例えば腕を広げると、そこに相手がしがみついてしまいます。
力を入れた所につかまって来るのです。
人間は「姿勢を保つこと」を本能的に最優先するので、倒れそうになった時にちょっとでも頼りになりそうなものを掴んでしまうのです。

腕をぶらぶらにしておいた方が相手が掴む場所が無くてそのまま投げられてしまう、という事らしいです。
本来、背中からの崩しは「引き投げ」などの背景になる技術だと思いますが、腕も介在させないと方向をコントロールできないので引き続き研究したいです。

背中を動かすといっても、今のところ肩周りを分かりやすく回転させるぐらいしか出来ません。
本当はもっと背中全体をダイナミックに動かす意識と筋肉の操作が必要だと思います。
そうすれば「相手を背中を使って引き寄せる」というより「相手を背中で下に投げ落とす」という感じになるでしょう。
一朝一夕で出来るようにはなりません。

度々太極拳を引き合いに出して恐縮ですが、柔術と酷似しているので例に出します。
太極拳の型には最初に必ず「起式」という動作が入っています。
両腕をフワーっと上げて、またフワーっと降ろすだけの一見簡単な型ですが、実はここに背中を動かす意識が入っている様です。

ただ腕を上げ下げしているだけだと100年練習しても何の効果ももたらさない運動ですが、「背中で腕を動かす」という要求を入れてやるとそれだけで相手を崩す技になります。
そして、この要求を入れると「起式」という型が非常に難しいものだと分かります。
昔はこの「起式」だけを3年間やらされて、あるレベルに達しないと先に進めなかったそうです。
だから1つの型を最後まで習うのに何年もかかりました。

柔術も太極拳も、あるいは他の様々な伝統的な武術も「背中」が重要なファクターである事は間違いありません。
私たちは普段、顔とか胸とか腹とか前面にばかり意識が集中していますが、武術をやるならもっと背中に気を配らなければならないでしょう。


今月は2526日が最後の稽古です。
19日はお休みなので、宜しくお願い致します。

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