体で手を動かす

認知心理学の研究によると人間は常に1100万件もの情報を受けているそうですが、知覚出来ているのはその内の40件ぐらいだそうです。
たったこれしか認識出来ないのは将来への不安とか、過去への後悔、不安定な身体の制御、といった余計な事にメモリーを割いているためで、これらから解放されなければ重要な情報を受け取れない様です。

例えば体が硬くてちょっとした事で転びそうになる人は、いつも体の制御にばかり気を配らなければならないので情報メモリーがいっぱいいっぱいなんですが、もしこれらを効率化してメモリーを空けたなら、後ろから殺気を放ってこちらを伺っている人物を察知できる様になるかも知れない訳です。
タントウ功など立っているだけで感覚が鋭敏になるのは、そういう仕組みなのでしょう。

●体で手を動かす

今回はKさんのレクチャーモードです。
「手を動かさない技」というのをやってみました。

手を動かさないでどうやって技をかけるんだ?という疑問が浮ぶでしょうけど、まさにそこが盲点です。
手とそれにくっついている腕は体のパーツの中でも最も器用で便利なため、たいていの人はそれだけで何でもやってしまいます。
それゆえ手と腕だけでやる意識構造が普通になってしまっているので、そうではない方法でアクセスされると理解できなくて混乱する事になります。

まず、受け手は両拳を突き出してがっちり構えます。
これに掛け手は掌をそっと被せ、手の位置を固定したまま体の重心だけをわずかにずらして手を下に滑らせると受け手はガクッと崩れます。

これだけのシンプルな技なんですが、やるのは非常に難しいです。
一番困難なのは「手を動かさない」という事です。
前述のように人間は手を使って何かしようとする癖が身に染み付いてしまっているので、手を封じるという行動自体がありえない訳です。
さらに、手は動かさないけど相手に対しては何らかの力を加える必要があり、それを手と腕の先、「体」でやらなければなりません。
しかし体は手のように器用には動いてくれませんから、どうしても分かりやすい運動になってしまいます。

このように意識を「手」から「体」にガラリと変え、それに応じて神経回路を組み替えなければならないので、コツを掴むのが大変なのです。
パラダイムを変更する必要があります。
しかし、一回変えてしまえば今度はそちらの世界が普通になるでしょう。
変わった世界から今までの技や型を見ると、考え方が真反対だった、という事もありえます。

例えば、この間も同じようなテーマで「手の方に腹を引き寄せる」というのをやりましたが、これで太極拳の技を見ると解釈が全く違ってきます。
陳式太極拳の一番最初の動作に手を顔の前に引き寄せておいて拳と足を打ち下ろす、という型がありますが、これは「手を動かす」考え方で、「体を動かす」考え方でいくと顔の前にある手に腹を引き寄せ、上げた足の方に地面を近づける、という事になり、こちらの方が型的にはしっくりくるようです。
そうすると本当に動かさなければならないのはどこなのかが分かってきます。

大きな課題にメンバーみんなで悩みながら稽古してみました。

次回は10月17日(土)です。
10日は稽古ありませんのでご注意ください。





スポンサーサイト

Powered by FC2 Blog

FC2Ad


Copyright © 武術練習会の研究開発日記 All Rights Reserved.